心肺蘇生法とAED

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胸骨圧迫やAEDの使用による心肺蘇生法の流れについて、もしもの時に備えて確認してください。
※AED(自動体外式除細動器)とは・・・
 電気ショックが必要ないわゆる心臓麻痺を機器自体が判断し、自動で電気ショックを行ったり、人がボタンを押すことで電気ショックを与えます。
 音声が使い方を順に指示してくれるので、誰でも簡単に使用することができます。

新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた心肺蘇生上の注意

 新型コロナウイルス感染症が流行している場合に行う心肺蘇生法は、普段と違い以下の点に注意してください。

1. 胸骨圧迫のみの場合を含め、心肺蘇生はエアロゾル(ウイルスなどを含む微粒子が浮遊した空気)を発生させる可能性があるため、全ての心停止傷病者に感染の疑いがあるものとして対応する。
※ハンカチなどがあれば傷病者の口と鼻にかぶせる。
2. 成人の心停止に対しては、人工呼吸を行わずに胸骨圧迫とAEDの使用による電気ショックを実施する。
※子どもの心停止は、窒息や溺水など呼吸障害を原因とすることが多く、人工呼吸の必要性が比較的高いため、講習を受けて人工呼吸の技術を身についけている家族などの場合には、人工呼吸も実施する。その際、手元に人工呼吸用の感染防護具があれば活用する。 
3. 心肺蘇生を実施し、救急隊に引き継いだ後は、すみやかに石鹸で手と顔を十分に洗う。また、傷病者の鼻と口にかぶせたハンカチなどは直接触れないように気を付けて廃棄する。

心肺蘇生法とAED使用の流れ

  • 成人 15歳以上
  • 小児 1歳以上15歳未満
  • 乳児 1歳未満
心肺蘇生法とAED(成人・小児)の図
心肺蘇生法とAED(成人・小児)
心肺蘇生法とAED(乳児)の図
心肺蘇生法とAED(乳児)

1.反応(意識)を確認する

傷病者の耳もとで「大丈夫ですか」または「もしもし」と大声で呼びかけながら、肩を軽くたたき、反応があるかないかをみます。
乳児の場合は、足の裏を刺激することも有効です。
【コロナ対策】傷病者の顔と救助者の顔が近づきすぎないように注意

ポイント
  • 呼びかけなどに対して目を開けるか、なんらかの返答または目的のあるしぐさがなければ「反応なし」と判断します。
  • けいれんのような全身がひきつるような動きは「反応なし」と判断します。
  • 反応があれば、傷病者の訴えを聞き、必要があれば応急手当を行います。
反応(意識)を確認する

2.大声で叫び応援を呼ぶ

反応がなければ大きな声で、「誰か来て!人が倒れています!」と助けを求めます。
協力者が来たら、「あなたは119番へ通報してください」「あなたはAEDを持ってきて下さい」と具体的に依頼します。

ポイント
救助者が一人の場合や、協力者が誰もいない場合には、次の手順に移る前に、まず自分で119番通報をしてください。また、すぐ近くにAEDがあることがわかってる場合にはAEDを取りに行ってください。
119番通報すると、通信指令員が心肺蘇生法実施の指示をします。
大声で叫び応援を呼ぶ

3.呼吸の確認

 傷病者が「普段どおりの呼吸」をしているかどうかを確認します。
傷病者のそばに座り、10秒以内で傷病者の胸や腹部の上がり下がりを見て、普段どおりの呼吸をしているか判断します。
【コロナ対策】傷病者の顔と救助者の顔が近づきすぎないように注意

ポイント
次のいずれかの場合には「普段どおりの呼吸なし」と判断します。
  • 胸や腹部の動きがない場合。
  • 約10秒間確認しても呼吸の状態がよくわからない場合。
  • しゃくりあげるような、途切れ途切れに起きる呼吸がみられる場合

反応はないが普段どおりの呼吸をしている場合は…

回復体位
  • 反応はないが普段どおりの呼吸をしている場合は、気道の確保を続けて救急隊の到着を待ちます。
  • 気道確保は人工呼吸を行う場合と同様に、頭部後屈あご先挙上法で行います。
  • 吐物などによる窒息の危険があるが、やむを得ず傷病者のそばを離れるときには、傷病者を横向きに寝かせます。このような姿勢を回復体位といいます。
回復体位
回復体位

4.胸骨圧迫

傷病者に普段どおりの呼吸がないと判断したら、ただちに胸骨圧迫を開始し、全身に血液を送ります。
■ポイント
1分間に100~120回の速いテンポで絶え間なく圧迫します。
圧迫と圧迫の間(圧迫を緩めるとき)は、胸がしっかり戻るまで十分に力を抜きます。
【コロナ対策】エアロゾルの飛散を防ぐため、胸骨圧迫を開始する前に、ハンカチなどを鼻と口にかぶせる。マスクや衣類でも代用可能。

成人・小児の場合

胸の真ん中を重ねた両手で「強く、速く、絶え間なく」圧迫します。
胸の真ん中に片手の付け根を置きます。
他方の手をその手の上に重ねます。両手の指をお互いに組むとより力が集中します。
肘をまっすぐに伸ばして手の付け根の部分に体重をかけ、胸が約5センチメートル沈むほど強く圧迫します。
小児に対しては、両手または片手で、胸の厚さの約3分の1が沈むほど強く圧迫します。
図
図
写真
写真
写真

悪い例

斜めに圧迫しない
肘を曲げて圧迫しない

乳児の場合

圧迫の位置は、両乳頭を結ぶ線の少し足側を目安とした、胸の真ん中です。
胸骨圧迫は指2本で行います。
圧迫の強さ(深さ)は、胸の厚さの約3分の1を目安として、十分に沈む程度に「強く、早く、絶え間なく」圧迫します。
乳児だからといって、こわごわと弱く圧迫しては効果が得られません。
胸骨圧迫位置
胸骨圧迫

5.人工呼吸(口対口 人工呼吸)

人工呼吸の技術と意思があれば胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組合わせで行います。
1 気道確保(頭部後屈あご先挙上法)
傷病者の喉の奥を広げて空気を肺に通しやすくします。
片手を額に当て、もう一方の人差し指と中指の2本をあご先(骨のある硬い部分)に当てて、頭を後ろにのけぞらせ(頭部後屈)、あご先を上げます(あご先挙上)
■ポイント
指で下あごの柔らかい部分を強く圧迫しないようにします。
2 人工呼吸
気道を確保したまま、額に当てた手の親指と人差し指で傷病者の鼻をつまみます。
口を大きく開けて傷病者の口を覆い、空気が漏れないようにして、息を約1秒かけて吹き込みます。傷病者の胸が持ち上がるのを確認します。
いったん口を離し、同じ要領でもう1回吹き込みます。
■ポイント
2回の吹き込みで、いずれも胸が上がるのが理想ですが、もし、胸が上がらない場合でも、吹き込みは2回までとし、すぐに胸骨圧迫に進みます。
人工呼吸をしている間は胸骨圧迫が中断しますが、その中断時間はできるだけ短くなるようにしてください。
感染防護具(一方向弁付きの感染防止用シートあるいは人工呼吸用マスク)を持っていると役立ちます。
傷病者の顔面や口から出血している場合や、口と口を直接接触させて口対口人工呼吸を行うことがためらわれる場合には、人工呼吸を省略し、胸骨圧迫のみを続けます。
【コロナ対策】成人の場合は、胸骨圧迫のみを行う。子ども(乳児を含む)の場合は、窒息や溺水など呼吸障害を原因とすることが多く、人工呼吸の必要性が比較的高いため、講習を受けて人工呼吸の技術を身についけている家族などの場合には、人工呼吸も実施する。
気道確保
一方弁付人工呼吸用マスク
一方弁付感染防止用シート

乳児の場合の注意

乳児の人工呼吸
 乳児の大きさでは、口対口人工呼吸を実施することが難しい場合があります。その場合は、傷病者の口と鼻を同時に自分の口で覆う口対鼻人工呼吸を行います。

6.心肺蘇生(胸骨圧迫と人工呼吸)を継続

心肺蘇生法
胸骨圧迫を30回連続して行なった後に、人工呼吸を2回行います。
この胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせ(30対2のサイクル)を救急隊に引き継ぐまで絶え間なく続けます。
ポイント
胸骨圧迫を続けるのは疲れるので、もし救助者が2人以上いる場合は、1~2分間程度を目安に、胸骨圧迫の役割を交代するのがよいでしょう。その際、胸骨圧迫の中断時間は短くするようにしましょう。
心肺蘇生法を中止するのは次の場合です。
救急隊に心肺蘇生法を引き継いだとき(救急隊が到着してもあわてて中止せずに、救急隊の指示に従います)。
心肺蘇生を続けているうちに傷病者が目を開けたり、普段どおりの呼吸をし始めた場合。

心肺蘇生のまとめ
  • 胸骨圧迫30回
  • 胸の真ん中(胸骨の下半分)を圧迫。
  • 強く(胸が5センチメートル沈み込むまで)
  • 速く(1分間に100回から120回のテンポ)
  • 絶え間なく(30回連続)
  • 圧迫と圧迫の間は力を抜く(胸から手を離さずに)
人工呼吸2回
  • 口対口で鼻をつまみながら息を吹き込む。
  • 胸が上がる程度。
  • 1回約1秒間かけて。
  • 2回続けて試みる。
  • 10秒以上かけない。

7.AED装着

1 使用手順
心肺蘇生を行なっている途中で、AEDが届いたらすぐにAEDを使う準備を始めます。
AEDにはいくつかの種類がありますが、どの機種も同じ手順で使えるように設計されています。AEDは、電源が入ると音声メッセージと点滅するランプで、あなたが実施すべきことを指示してくれますので、落ち着いてそれに従ってください。
可能であれば、AEDの準備中も心肺蘇生を続けて下さい。

2 AEDの到着と準備

AEDを傷病者の近くに置きケースから本体を取り出します。
AEDの電源を入れる
AEDのふたを開け、電源ボタンを押します。ふたを開けると自動的に電源が入る機種もあります。
電源を入れたら、以降は音声メッセージと点滅するランプに従って操作します。

3 電極パッドを貼る
傷病者の衣服を取り除き、胸をはだけます。
電極パッドの袋を開封し、電極パッドをシールからはがし、粘着面を傷病者の胸にしっかりと貼り付けます。
機種によっては電極パッドのケーブルをAED本体の差込口に入れるものもあります。

ポイント
電極パッドを貼り付ける際にも、可能であれば胸骨圧迫を継続してください。
電極パッドは、すき間のできないようにしっかりと貼り付けます。アクセサリーなどの上から貼らないよう注意します。
身体の表面が濡れている場合は、水滴をタオルなどで拭き取ってください。
ペースメーカーなどがある場合はペースメーカーを避けて電極パットを貼ってください。
成人用と小児用の2種類の電極パッドが入っている場合や、成人用モードと小児用モードの切り替えがある機種があります。その場合、小学生以上には成人用の電極パッド(成人用モード)を使用し、未就学児(乳児を含む)には小児用電極パッド(小児用モード)を使用してください。
AEDの到着と準備
電極パッドを貼る

8.心電図の解析

  • 電極パッドを貼り付けると「体に触れないでください」などと音声メッセージが流れ、自動的に心電図の解析が始まります。このとき、「みなさん、離れて!!」と注意を促し、誰も傷病者に触れていないことを確認します。
  • 一部の機種には、心電図の解析を始めるために、音声メッセージに従って解析ボタンを押すことが必要なものがあります。
  • 「ショックは不要です」などの音声メッセージが流れた場合は、ただちに胸骨圧迫を再開します。

9.電気ショック1回

  •  AEDが電気ショックを実施する必要があると判断すると「ショックが必要です」などの音声メッセージが流れ、自動的に充電が始まります。充電には数秒かかります。
  • 充電が完了すると、「ショックボタンを押してください」などの音声メッセージが出て、ショックボタンが点灯し、充電完了の連続音が出ます。
  • 充電が完了したら、「ショックを行います。みなさん、離れて!!」と注意を促し、誰も傷病者に触れていないことを確認し、ショックボタンを押します。
ポイント
  • ショックボタンを押す際は、必ず自分が傷病者から離れ、誰も傷病者に触れていないことを確認します。
  • 電気ショックが加わると、傷病者の腕や全身の筋肉が一瞬けいれんしたようにビクッと動きます。
  • 機種によっては自動で電気ショックを行うものもありますので、音声メッセージに従ってください。

10.胸骨圧迫から心肺蘇生を再開

電気ショックが完了すると、「ただちに胸骨圧迫を開始してください」などの音声メッセージが流れますので、これに従って、ただちに胸骨圧迫を再開します。

ポイント

  • AEDを使用する場合でも、AEDによる心電図の解析や電気ショックなど、やむを得ない場合を除いて、胸骨圧迫の中断をできるだけ短くすることが大切です。
胸骨圧迫から心肺蘇生を再開

11.AEDの手順と心肺蘇生の繰り返し

  • 心肺蘇生を再開して2分ほど経ったら、再び、AEDが自動的に心電図の解析を行います。
  • 音声メッセージに従って傷病者から手を離し、周りの人も、傷病者から離れます。
  • 以後は、(8)心電図の解析(9)電気ショック1回、(10)胸骨圧迫から心肺蘇生を再開の手順を、約2分間おきに繰り返します。

問合わせ先・担当窓口

深川消防署 救急課 救急救助係